職場で起こるコミュニケーションエラー。場合によっては、仕事が進まないばかりか致命的な事態を招きかねません。また、上司と部下の間で意思疎通がうまくできなければ、出世にも大きく響いてきます。今回、部下から思わぬとばっちりを受けた彼は、どうやってそのピンチを切り抜けたのでしょうか。ご覧下さい!
Wさん 40代 男性【愛知県】
今年、私は会社でマネージャーという役割からITインフラ部の「部長」という役割に代わりました。
グループの管理と会社の運営の一部を任されていたマネージャーという役割から離れ、会社では新設で、初めての役職を任されることとなりました。
今この立場になってわかることがあります。それはグループの人の管理と会社運営という仕事がとても嫌だったという事です。「マネージャー」「リーダー」という肩書は、かつて自分がとても欲しかった肩書でした。それは、対外的にも、世間体的にもあったらいいものでした。しかし仕事の中身は、部下の人間性の管理と会社の運営でした。
そして何よりも素晴らしいことは、ITインフラ部の部長という役職は、私のために創られた役職であり、私がこの現実を生きるために用意されたプレゼントであると感じています。
あまり関わりたくない部下がいて…
今回はマネージャーだった私が、ITインフラ部の部長の役割となるまでのプロセスを書かせて頂きます。
発端は、今から約1年半前に、「T・I」さん(40代女性)が入社したことでした。当時、会社は4つのグループに分かれ仕事をしており、私が担当しているグループに、Tさんを受け入れることになりました。本人からのアピールもあり、仕事はすごい出来る人!と思い込んでいました。実際、仕事はできますし、対外的にも印象は良く、問題ないように思いました。
数日後、同じグループで飲み会に行き、そこでTさんを知る機会がありました。
そこでのTさんは、容姿のコンプレックス、学歴への後悔、自分自身への諦め、前の職場への恨み、今の社長への恨み等々、いろんなものを抱えていました。
彼女の言葉があまりにも直接的で超マイナスで攻撃的だったため、私は瞬間的に閉ざし、彼女に感じるものから自分を知るということをやめて、彼女(他人)の人間性として見ていました。
それ以来、Tさんは私の部下ではありますが、私は腫物にでも触るように、機嫌を損なわないように気を使い、仕事をしていたように思います。どちらかと言うと私は「関わりたくない」という気持ちを持ちつつ仕事をしていたのだと、今ならわかります。
ひどいですよね、部下なのに、自分のグループの一員なのに、上司なのに…。
まさか自分のことを社長に直訴する?
その後1年が経ち、昨年の年末に、Tさんが爆発し、社長へ直々に「不満・クレーム」を言いに行ったのです、まさに直訴しに行ったようなものです。
その時、私について次のようなことを言ったようです。
・上司がジロジロ見てきて気持ちが悪い
・ウザい
・一緒にいると気分が悪くなる
・体調が悪くなる
・同じ空気を吸いたくない
・暴言を吐かれた
・嫌なことをされた、言われた…などなど。
ハッキリ言って、私は何かした覚えは無いし、むしろ何もしていない!暴言で唯一覚えているのは、飲み会のノリと雰囲気で「おばさん!」と言ったことぐらいです。(それはごめんなさい)
嫌なことされた、言われた…については、電話には出たくないという彼女に「電話に出て欲しくて」近くに電話器を配置したことでしょうか。なぜそこまで言われなければならないのか、さっぱりわかりませんでした。
私は常に母から「ああしろ!こうしろ」と言われて育ってきました。ですから、女性から意見されることに抵抗感を感じるところはあります。
しかし、Tさんに、私は何もしていないのです!
そのTさんからの話を聞いた社長は、ビックリしてすぐに対応し始めました。
周りの社員に話を聞き、Tさんが言っていることが本当なのかを確かめたそうです。
しかし、ほぼ全てがTさんの一方的な感じ方であり、彼女の方がおかしいのでは?とわかったようでした。
そして、社長はTさんに
「感じ方は人それぞれで、あなたが感じたことは、あなたの中では本当のことであって、それを否定することはしません。しかし、社内の人たちはそのようには感じておらず、むしろ逆であって、すべてがあなたのためであると思います」と、こう話したそうです。
社長はさすがだと感じました。
目の前の現象から自分を知る
実は社長が社員に聞き取る前に私は呼ばれ、Tさんからこんなことを言われていますと、聞かされていました。
ものすごいショックで、お先真っ暗という感じでした。
私は、この件を毎日のようにパートナーに話し、また、仲間にも話していました。そうすることで、自分一人では分からない自分を知ることが出来るようになりました。
パートナーとのシェアは大きいです。多くの気づきがあります。仲間の意見もそうです。別の角度から自分を知ることができました。
今回の出来事で
“認めていない自分がいること”
“今の自分にOKを出せていないこと”
“部下を見下しながら仕事をしていたこと”
などなど、本当の意味で真剣に自分が、この現象をつくり出した自分の無意識を理解しなければいけなくなりました。
そして一番受け入れたくなかったことは「マネージャー」「リーダー」という肩書が欲しいだけで、実は人を管理する仕事はしたくないし嫌だったということ。
このことが分かったとき、何とも言えない“安堵感”というプレゼントをいただきました。そして、その流れで、ITインフラ部の「部長」に就任したのです。
やりたいことができるポジションに
Tさんは私と違うグループに配置され、そして私は「部長」という役職になったことで、人の管理はしなくてもよくなりました。まさに、やりたいことができるポジションをいただきました。
その分、会社からの期待とプレッシャーも感じます。それすらも自分が望んでいることで、そういうものがモチベーションとなって仕事ができることも理解できるようになりました。
今回のTさんに関する体験で、私の無意識には、
“会社への不満・自分の仕事への姿勢の不誠実さ・自分自身へ自信の無さ”があり、もう隠せない状況であることを知ることとなりました。
自分のストーリーは自分の思い通りに進んでいる。
幸せになるために生まれてきた。それを体感する出来事でした。